耳垢との付き合い方  

川合耳鼻咽喉科 ver.054009

わざわざ道具を使って耳そうじをするのは人間だけ?です(多分)。
象は50年生きるのに耳そうじしませんし、犬猫もそうです。動物の耳は、ほっといても耳垢が自然に外に出てくるように自浄(=オートクリーン機能)付きで出来ているからです。実は人間の耳も同じように自然ときれいになるように出来ています。普通に考えると月に一回もすれば充分、別にそうじしなくともたまったりしない方が大半です。

ではまったく耳そうじはしなくて良いのかというと、必要な方もたくさんいらっしゃいます。

<赤ちゃん>

赤ちゃんの耳の中にはお母さんのおなかの中にいたころの細胞のカスがつまったままになっていることがあります。これはなかなかとれにくく、除去するには専門家(耳鼻科医)の道具と技術が必要です。とらないとすぐにどうなる、ということはありませんが心配なら耳鼻科医を受診してください。

<耳掃除の下手?な人>

外耳道というのは一種の皮膚の筒です。そこを綿棒のような道具できれいにしようとすると、かえって押し込めて外耳道をふさいでしまうこともあります。

<耳掃除をよくする人>

外耳道の皮膚はきわめて薄く繊細(せんさい)に出来ているため、ちょっといじるだけでいじりすぎ・掻き過ぎの状態になってしまいます。こうなると、刺激のために耳垢がたまりやすくなる・破れた皮膚からツユ(滲出液)がしみ出してじくじくする、かゆい、気になっていじる、また耳垢がたまる、という悪循環におちいります。この状態を外耳道炎とか外耳道湿疹と呼びます。このような場合の一番の治療法はいじらないこと、そう言われてもかゆいものはいじりたい、そこで医院ではかゆみ止めの液や軟膏、抗生物質の点液をお出しします。

<お年寄り>

年をとると外耳道の自浄機能がうまく働かなくなり、耳垢が充満して聞こえなくなってしまうことがあります。70才過ぎで補聴器をかけても聞こえないと来院された方が、耳垢を取ったとたんに補聴器はもう要らないといって帰られたこともあります。年のせいと難聴をあきらめる前に一度は耳鼻科を受診することをお勧めします。

 

たまった耳垢にお風呂やプールで水がつくとふやけて一気に外耳道を閉塞して聞こえなくなります。ふやけた耳垢を除去すればすぐに聞こえるようになります。またはがれた耳垢が鼓膜のそばでごろごろ動いて耳鳴りすることもあります。これも除去すると簡単に良くなります。

耳垢は外から見えない上、個人差が大きいため、どの方にでもあてはまる方針はありません。たまに耳垢ぐらいで医師にかかるのは悪いと気兼ねなさる方がいますが、これは無用の気づかいです。実を言うと院長は自分の家族の耳垢を家でとったことはありません。それだけの道具と技術がなければ、安全に耳垢など取れないことをよく知っているからです。あまりに取りにくい場合には数回に分けて、薬液でやわらかくしながら取ったりもします。まずは心配なら受診を、大変良くなる方もおられます。