小児の浸出性(しんしゅつせい)中耳炎の治療方針

川合耳鼻咽喉科 Ver.041006

鼓膜の内側の空気と音を伝える小さな骨(耳小骨)の入った場所を中耳腔(くう)と呼びます。この場所が陰圧(気圧が低い状態)になると浸出液(にじみ出した液)がたまり鼓膜の動きが悪くなって聞こえにくくなります。この状態がずっと続く状態を浸出性中耳炎といいます。ほっておくと鼓膜が変形して聞こえないままになったりしますが、そこまでなることはまれです。

当院では次の3つの治療方針の中から患者さまの都合に合わせて選んでいただいています。1つはマメに通院する(週2、3回程度)。2つめは定期的に通院する(2~4週間に1回)。3つ目は重症のときやなかなか治らないときにすすめる手術的治療です。

医師から見て一番困るのは、あるときまでは熱心に通ってあるときから来なくなって、数年後に重症化してから受診というケースです。場合によっては数ヶ月、治るまでに数年かかることもありますが、自己判断はなさらず医師にご相談ください。

滲出性中耳炎の原因

原因はアレルギーや炎症などいろいろですが、耳管(耳と鼻の奥をつなぐ管)が障害されると換気が上手くいかなくなり、中耳内が陰圧になって液がたまりやすくなります。

子供と高齢者に多い

子供の場合、大人に比べて耳管が未発達なこと、鼻の奥にあるアデノイド(扁桃腺の一種)が耳管の入り口をふさぎやすいこと、鼻炎・上気道炎を繰り返すこと、急性中耳炎から移行する例が多いことなどより、多く見られます。高齢者の場合、耳管が閉じっぱなしになりやすいために水がたまりやすくなります。思春期から壮年にかけては少ないのが特色です。

治療法

1.耳管通気療法
幼小児の場合には「ハック」「ガッコ」などと大きな声で言ってもらって、耳管が通りやすくなった瞬間を狙って耳管から中耳に空気を送り込みます。少し大人になると細い管(通気管)を鼻から入れて、耳管に直接空気を送る方法を使います。頻回にやるほど効果があります。自宅でできる方法として鼻をつまんで鼻に息を送る耳抜きや、子供用の風船療法があります。

2.手術的治療法
鼓膜を切って中の液を吸い取る方法(鼓膜切開術)、鼓膜を切った穴に細いチューブを差し込んで空気穴を確保する方法(中耳換気チューブ留置術)があります。まれに鼓膜を切開した穴が閉じなくなることもあり、慎重に行います。また肥大したアデノイドを取る手術もあります。

3.薬物療法
消炎剤を主に使い、ときに抗生剤や下記の治療も併用します。
【抗生物質少量長期投与】

マクロライド系と呼ばれる抗生物質少量(通常の半分以下)を長期(3~6ヶ月程度)使う治療法で、時間はかかりますが高い治癒率が出ています。
【抗アレルギー剤】
アレルギーが関与することも多く、アレルギー性鼻炎のある場合はもちろん、それがない場合でもときに抗アレルギー剤を使用します。

4.鼻すすりの禁止、ハナカミのすすめ
お子様の鼻すすりはできるだけやめさせてください。鼻をすすると耳管を通じて中耳内の空気も吸い出されて陰圧となるため滲出性中耳炎が治りにくくなります。また鼻汁があると、鼻の奥にある耳管の入り口を粘液でふさいで換気する機能を障害するため治りにくくなります。できるだけ鼻をかませるようにしてください。

5.水泳との関係
明らかに水泳により悪化する方を除き、水泳はしてかまいません。水泳の後は鼻をよくかむようにしてください。